灯火
下人はただひたすら、羅生門から離れるように走っていた。
いつしか、下人は知らない路地へ入っていった。
下人は疲れ果て、その路地をゆっくりと歩いていった。
時々、老婆がこないかどうか確かめるように、後ろを振り向きながら。
何度目かに振り向いたとき、下人は死角から何かの気配を感じた。
その方向に向き直ろうとしたが、その瞬間後頭部を何かでたたかれたような痛みを感じた。
意識が途切れる直前に、何かささやかれたように思った。
「・・・恨み・・・もらうぞ・・・」
気がつくと、下人のまわりにはたくさんの亡霊が漂っていた。
下人が思わず後ろに下がったとき、ある異変に気がついた。
刀が、いつの間にかなくなっていた。
「・・・なっ・・・!」
下人が驚いている間に、亡霊たちは下人のほうに近づいてきた。
「・・・我らが主の恨み、晴らさせてもらうぞ・・・」
そして、下人はまた意識を失った。
「くっくっく・・・」
どこからか聞こえる笑い声。
それは、老婆のものだった。
「生かしておいてやろうではないか。ただし、目覚めても意識を失うだけの繰り返しだがな・・・」
とても楽しそうに老婆はつぶやいた。
「さて・・・長い長い昔話を、始めようか・・・」
老婆はそう言って、近くの亡霊に身を任せて眠り込んだ。
そこは少し前の京の町。
そこには色々な人々がいた。
例えば、行き倒れている人々。
例えば、仕事を解雇された人々。
例えば、その中でうまく立ち回っている人々。
そんな人々を、老婆は高い視点から眺めていた・・・
老婆が見ていたのはある女。
彼女は、蛇を四寸ばかりに切って干したものを、両手に抱えていた。
緊張しながら、しかしそれを態度に出さないようにして、彼女は太刀帯の陣に行った。
そして、ほっとした様子で帰ってきた。
今日を生きるための資金が出来たと。
・・・今日も、これが偽りの魚だとばれなかったと。
そんなことをするのはその女ばかりではなかった。
食べられる野草を摘んで、売り払う者。
それによく似た外見の草を売り払う者。
動物を狩って、それを売り払う者。
偽れるものならば、何でも売り払われた。
いつの間にか、京の周りには偽れるものがなくなっていた。
しかし、立ち回っている人々は、生きることをあきらめなかった。
人を売る勇気のある者は、人を売った。
そうでない者は、ただ、恨みをどこかに向けながら、倒れていった。
そして京の疫病はさらに広がっていた。
それは身分の違いなど関係なく、見境なく襲っていった。
たとえ売る者がいようと、買う者がいなくなっていった。
しかし、立ち回っている人々は、生きることをあきらめなかった。
人を食らう勇気のある者は、人を食らった。
そうでない者は、ただ倒れていった。
しかし、その「食糧」も、長くは持たないもの。
人を食らった者も、結局は倒れていった。
京の町には、死人があふれかえっていた。
行き倒れている人々。
罪を犯した人々。
人を売った人々。
人を食らった人々。
そして、ひたすら意識を失わされ続けていた下人も、それに耐え切れずに倒れていた。
どんな人々も、京の町の死人として倒れていた。
これでも、「生きるためには仕方がない」のだろうか。
最後には、誰も生きてはいないのに。
誰もが等しく、倒れているのに・・・
そんな中、老婆だけは羅生門で寝ていた。
死人だらけの羅生門。
たくさんの死の中にある生。
そのたった一つの灯火は、消えることなく灯っていた。
そして、老婆が目を覚ました。
老婆は周りを見渡しながら、一人つぶやいた。
「やはり、滅んだか・・・だが、それも予想の出来たこと・・・」
人がいなくなった京の町。
その中に一人、老婆がたたずんでいた。
「さて・・・次は、どこへ行こうか・・・」
そうつぶやきながら、ゆっくりと歩いていく。
「また、いい町を探さなくては・・・」
京の出口まで来て、老婆はふと振り返る。
しわがれた声で弔いの言葉を述べながら、老婆は前を見つめる。
そして、新たな決意を秘めた目をした老婆は、険しい道に向かって、進んでいった・・・
あなたの町には、不思議な老婆はいますか。
もしかしたら、それはこの老婆かもしれません・・・
っていうか、下人・・・一言しか喋ってないじゃん。
風景描写中心だよね。
しかも思ったとか連発しまくり(笑)
だって、亡霊さん路線で行きたいんだもん(笑)
最後のしめは私大好きですよ。
これ、俺の性格がすごくよく出てる文だよね。
・・・と。
書き終わったあとの感想?
取り合えず眠いよ。
締め切り当日3時半。
で・・・かなり想像してたのと路線が変わったなぁ・・・
陰陽道って言葉が一言も出てこなかったし・・・
まあ、いいか。京都滅んだし(そこなのかよ)
もっともっと、暗く出来たら楽しかったような・・・まあ、私には無理か。
滅ぼしたよー、頑張ったよー。
・・・目標達成。
以上。
・・・あ。
これを原稿用紙に写さなきゃ・・・はぁ。