文学史 一学期中間範囲
上代の文学(文学の誕生〜平安遷都)

文学の誕生
 水稲耕作により定住化した集団生活が営まれ、共同体的社会が形成される

 祭り
  …外界の自然に対する畏怖の念により超人的な力を神として祭ったもの
   この場で語られる神聖な詞章文学の原型である

 共同体、祭りが統合され、詞章も言語表現として自立、洗練される
  →文学の誕生 歌謡や神話が生み出される

口承から記載へ
 大陸から漢字が伝来→歌謡は定型化、神話は散文化する
 表意文字である漢字を表音的に使用する方法が考案
 →万葉がなを経てかな文字を生み出す

古代国家の文学
 中国文化を受容し、その影響の下で国家意識が目覚める
 →史書や地誌の編纂  例 『古事記』『日本書紀』「風土記
 和歌 …『万葉集
 漢詩文…『懐風藻


神話の世界
 神話…もともとは口承であったが、漢字の伝来により記載文学になり散文化した

 『古事記』 太安万侶撰録 712年成立
  天武天皇が帝記や本辞を正し、稗田阿礼に読み習わせた
  その後711年に太安万侶が元明天皇の命を受け撰録

  上巻…神代の物語 天地創造のはじめ〜神武天皇の誕生
   皇室の支配の正当性を強調
  中巻…神武天皇〜応神天皇
   神話、伝説的である
  下巻…仁徳天皇〜推古天皇
   人の世の物語としての性格が顕著になっている

  表現
   序文      …純粋な漢文体
   歌謡、重要な語句…万葉がなによる一時一音式
   それ以外は漢字の音訓を交えた変則の漢文体

 『日本書紀』 舎人親王編 720年成立
  神代から持統天皇までの記事を載せた編年体の歴史書六国史のはじめ
  記述の程度に史書としての性格が強く出ている
  歌謡以外は純粋な漢文体で記されている

 「風土記」 713年編纂の命下る
  現存するのは『出雲国風土記』を含めた五風土記
  だいたい純漢文体だが、変則の漢文体、宣命書も使われている

 氏族の伝承と仏教説話
  各氏族の伝承も独自な形で纏め上げられる
  『高橋氏文』、『古語拾遺』など
  『日本霊異記』…景戒が編集
   奈良記の説話が多い
   平安以降の説話集のさきがけをなす

祭りの文学
 古代歌謡
  呪言や呪詞は神秘的な働きを持つものと信じられていた
  言葉に宿る霊力に対する信仰を言霊信仰と呼ぶ
  呪言や呪詞の儀礼化→祝詞
  表記は宣命書である

 宣命
  漢文体のものを詔勅、和文体のものを宣命と呼ぶようになった
  政治的意図も見出される
  祝詞に類似するが、実用的な目的に応じ散文化への方向も
  表記は宣命書である


詩歌
 古代歌謡の多くは『古事記』『日本書紀』に載せられている
  →記紀歌謡と呼ぶ、約190首
 「風土記」『万葉集』『琴歌譜』などにも収められている
 古代の人々の様々な生活感情を知ることが出来る

 表現、歌体
  枕詞序詞が多用される
  片歌旋頭歌短歌長歌など、後に発達する歌体の原型を見ることが出来る

 仏足石歌
  奈良薬師寺の仏足石歌碑に刻まれた歌
  短歌形式に七音一句を加えた歌体(仏足石歌体
 『琴歌譜
  二十一種の歌謡が万葉がなで記されている

和歌の発達
 歌謡は口誦本位のあり方を離れ、自覚的な詠む歌としての性格が強められる

 『万葉集』 編者未詳(大伴家持ら)
  成立
   大伴家持が関係している
   ほぼ現存する形に集大成されたのは奈良記の末頃だと考えられている
  構成、内容
   雑歌相聞挽歌の三大部立
   短歌が全体の九割を占めるが、長歌旋頭歌などがある
  歌風の変遷
   第一期 舒明天皇〜壬申の乱
    五音、七音の定型に落ち着き始めている
    皇室歌人が中心で、額田王が優れている
   第二期 壬申の乱〜平城京遷都
    表現技巧の発達、長歌・短歌などの形式が完成
    柿本人麻呂…長歌の様式を完成
    高市黒人も有名
   第三期 平城京遷都〜天平5年
    大陸の思想や文化が輸入される
    作者層と歌風が多様に分化し、万葉の盛時を築き上げた
    山部赤人山上憶良大伴旅人など
   第四期 天平6年〜天平宝字3年
    感傷や優雅に傾き、理知や技巧の凝らされたものが多くなった
    代表歌人は大伴家持など

  舒明天皇以後のほぼ一世紀半の間に作られたものである
  万葉がなが使われる
  古代の民衆たちの歌を数多く伝えている…東歌防人歌

漢詩文
 伝統の和歌に対する新文学として公的な位置を獲得

 『懐風藻』 編者不明 751年成立
  中国六朝詩の風に習い、五言詩が大部分を占めている

歌学の誕生
 和歌に対する批評意識を理論化しようとする試みから生まれる
 『歌経標式』 藤原浜成作 772年成立
  和歌の本質が比喩表現にあることを指摘