倫理 一学期期末範囲
宗教とは
 宗教の意味
  人間とは、世の中とは何かを明らかにする。
  理性で解決できないものを神との関係で解き明かす。

 世界三大宗教
  キリスト教
  イスラム
  仏教

 二つの世界観
  キリスト教的世界観 … 単線的時間意識
  仏教的世界観    … 円環的時間意識


Tキリスト教
1,ユダヤ教
  イスラエル人(ヘブライ人)の民族宗教
  神:ヤハウェ
   唯一絶対の人格神 一神

  旧約聖書
   ユダヤ教の経典
   神とイスラエル人との間の契約
   ←神と契約が結べたのはイスラエル人が優れた民族だから
    =選民思想

  モーセの十戒 『旧約聖書』「出エジプト記」
   モーセがシナイ山で神から授かった律法
    宗教律 … 偶像崇拝の禁止など
    道徳律 … 盗み、殺しの禁止など
   →背くと裁かれる「裁きの神
    律法を守ることで救われる律法主義

  バビロン捕囚
   預言者による警告
    苦難に会うのは律法に背いていたから
    救世主(メシア)の到来を予言
    →メシアを待望しながら律法を厳格化  例 パリサイ派

  律法主義から形式主義へ
   律法の形式化は、律法本来の精神を失わせ、精神が伴っていない状態に
   律法を守れない人を差別化
   →これを批判したのがイエス




2,イエスの思想
  イエス・キリスト
  『新約聖書』にその言動が記されている。

  神の福音(よき訪れ、喜ばしい知らせ)
   イエスは神の救いや恵みが人々の身近に訪れていると説いた
   「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」
    =自分の罪を自覚し、神の意思の実現に努めること。
  ※福音は後にイエス自身の言葉や行いを意味する

  律法の内面化
   形式的な律法主義を批判
   本来の信仰とは心から律法すなわち神に忠実であること

  神の愛・アガペー
   神が人々に与える、無差別、平等の無償の愛
   弱い人間でも悔い改めれば神は救ってくれる

  二つの戒め ― 十戒に対するもの
   神への愛 … 主なる神を愛する
   隣人愛  … 隣人を愛する
           神への愛を実践するのが隣人愛
  ※黄金律
   「何事でも人々からしてほしいと望むことは人々にもそのようにせよ」

  イエスの死
   イエスの活動はユダヤ教の指導者たちの反感を招く。
    →ユダヤ教の指導者とローマの総督に裁かれ
     十字架にかけられて処刑された。

  キリスト教の誕生
   ペテロを中心とする信徒たちの仲に復活信仰が生まれる
   イエスは死の3日後に復活した
   イエスは救世主(キリスト)として遣わされた神の子である
    =キリスト教の誕生(原始キリスト教
   「イエス・キリスト」
    イエスは救世主であるという信仰の確信
     イエスの死後、ペテロたち信徒がエルサレムを中心として
     宣教活動を展開(エルサレム協会
      例 ローマ教会 「教会の中の協会」
        その最高指導者が教皇(法皇)







3,世界宗教への展開
(1)パウロの思想
  熱心なユダヤ教徒としてキリスト教徒を迫害。
  迫害の途上でイエスの声を聞き回心する。
   →キリスト教の熱心な伝道を始め、対象を異教徒たちにまで拡大

  イエスの死=贖罪
   イエスの死は、人間の原罪を購うものであった。
   イエスはそのために遣わされた神の子である。

  信仰義恩説
   パウロにおける信仰の核心。
   人は信仰によって神に(正しい)と認められる。

  キリスト教の三元徳
   信仰希望
   この三つを持ってこの世に生きることを説いた。

(2)教父哲学
  キリスト教の国教化
   キリスト教は地中海世界まで広がっていくが、
   ローマ帝国により迫害を受ける。
   A.D.313  ローマ帝国により公認される
     392  ローマ帝国の国教となる
    →キリスト教の理論化、制度化、世俗化の必要性
     教父の登場=キリスト教の信仰と教会のあり方を
           体系付けた指導者たちのこと。

  アウグスティヌス(354〜430)の思想
   キリスト教の七元徳
    キリスト教の三元徳にプラトンの四元徳を加えた
   教義の確立
    天地創造、原罪などの教義を確立。
    また、三位一体の教義を唱える(一神教のため)
     神と神の子であるイエスと聖霊の三社は一体であるという教義
   神の恩寵 ― 神の愛
    人々の救済はただ神の一方的な恩寵による。
    この神の恩寵の仲介をするのが教会である。

(3)スコラ哲学
  教会や修道院に付属する神学校(スコラ)で研究された哲学
  トマス・アクィナス(1225?〜1274)の思想
   アリストテレス哲学を用いてキリスト教の信仰を理性的に説明
   →理性信仰を統合
   「哲学は進学の侍女
    自然を完成させるのは恩寵である
    哲学は進学に仕えるべきもの
    神学が最高の学問
Uイスラム
1,イスラムの成立
 7世紀前半、アラビア半島において
 ムハンマド(マホメット)によって創始された
 ムハンマド(570?〜632)
  メッカの出身
  40歳のころヒーラ山の洞窟で瞑想中に神の声を聞いた
  「起きて警告せよ
   →自分は神の預言者であると自覚し、メッカの人々に神の教えを伝える
    彼が人類最後の預言者

 イスラムの成立
  ムハンマドは多神教や偶像崇拝を批判。
  →支配層から迫害を受ける
  622 メディナに逃れる(ヒジュラ、聖遷)
     そこで政治的権力と宗教的権威を確立
  630 メッカを征服し、イスラムの聖地とする

2,イスラムの教え
 神:アッラー
  唯一の絶対神(偶像崇拝の禁止)
  宇宙の創始者であり、最終的に審判を下す
  「イスラム」とは、「神への絶対的帰依」という意味
  →個人の生活も社会的活動も全て神の規範に従う

 経典:『コーラン
  ムハンマドが生存中に神から受けた啓示を記録したもの
  イスラム教徒(ムスリム)の生活規範、イスラムの文化の基礎
  六信と五行が示されており、その遵守が要求される
  六信…神、天使、預言者、啓典、来世、天命の信仰
  五行…信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼

 イスラム世界の拡大
  宗教集団であるとともに生活共同体であるウンマを形成
  ムスリムには神の正義を拡大するよう努める義務がある
  →歴代カリフムハンマドの後継者)は
   ウンマの拡大を求めて聖戦(ジハード)を行った











V仏教
1,バラモン教
(1)古代インドの社会と思想
  B.C.1500ごろから侵入してきたアーリア人によってバラモン教が作られる
  厳格な身分制(後のカースト制度)をもとにする
  バラモンクシャトリヤヴァイシャシュードラ
  バラモン階級が社会支配層

(2)ウパニシャッド哲学
  バラモン教の聖典『ヴェーダ』の付属書
  業(カルマ)と輪廻転生
   前世の行い()によって今の身分(カースト)が決まっている
   人間は死ぬと、その業にふさわしい姿に生まれ変わる
   →無限に生死を繰り返し、心の安らぎを得ることがない
    =輪廻転生
   輪廻転生の苦しみから解き放たれるには
   梵我一如を自覚する必要がある

  梵我一如
   梵(ブラフマン):絶対的な永遠不変の最高原理
   我(アートマン):永遠不変の我、真実の自己
   →宇宙の絶対原理と個々の自我の本体は究極的には同一である
    =梵我一如
   真実の自己を自覚すれば梵我一如の境地に到達
   →輪廻を断ち切り一切の苦しみから解き放たれた境地に入る(解脱
   そのためには世俗の生活から離れ、
   厳しい苦行や禁欲、瞑想に励むことが必要

(3)自由思想家の登場
  六師外道
   バラモン階級の権威を否定した自由思想家が登場
   例 ジャイナ教(ヴァルダマーナ)

  ヒンドゥー教
   バラモン教が民間信仰を取り入れて発展したもの













2,仏陀の思想
 ゴーダマ・シッダッタ(シッダルタ)が
 開いた悟りをもとに仏教が生まれる
 仏陀(ブッダ)…悟りを開いて解脱した人

(1)仏陀の世界観
  一切皆苦
   世界の根本、人は全て苦しみからできている
  四苦八苦
   四苦…生老病死
   八苦…愛別離苦怨憎会苦求不得苦五蘊盛苦
   原因 この世界を貫く心理(ダルマ)の無知(無明
      →我執を生じさせ、三毒()に
       代表されるような煩悩を生み出す

  縁起の法
   ダルマを悟ることで苦しみから解放される
    =縁起の法 ←因縁生起
     諸行無常
      この世のすべてのものは絶えず変化し消滅し、常住不変のものはない
     諸法無我
      それ自体で存在している固定的で永遠不変の実体(我)は存在しない
     →バラモン教の梵我一如を批判

  涅槃寂静
   苦しみから解脱すると涅槃(ニルヴァーナ)の境地に至ることができる

(2)仏陀の教え
  四法印・・・仏教の思想を特徴付ける四つの基本的主張
   一切皆苦諸行無常諸法無我涅槃寂静

  四諦・・・悟りにいたるために自覚すべき心理
   苦諦集諦滅諦道諦

  八正道・・・快楽と苦行のどちらにも偏ることのない中道に生きるための方法
   正見正思正語正業正命正精進正念正定

  三宝五戒
   仏門に入るものは三宝()への帰依を表明する
   また、在家の信者は五戒を守るように努める
   不殺生戒不偸盗戒不邪淫戒不妄語戒不飲酒戒

  慈悲の心
   仏教における愛
   生きとし生きるものすべてに対して持つべきもの
   …人々に楽しみを与える恵み
   …人々の苦しみを取り除こうとする願い

(3)仏教のその後の発展
  部派仏教(南伝仏教)
   仏陀の死後、仏教教団の分裂が始まり、上座部大衆部に分裂
   その後20ほどの部派が並立=部派仏教
   自分自身の解脱を目指して厳しい修行をし、
   阿羅漢となることを理想とする
    =修行者の到達しうる最高の位

  大乗仏教(北伝仏教)
   自利のみでなく利他を重んじ、部派仏教を小乗仏教と批判
   自己の解脱とともに広く一切衆生を救うことを念願し、
   菩薩を理想とする
    =自利と利他の両者を目指す修行者

  大乗仏教の思想
   六波羅蜜
    菩薩になるための実践徳目
    布施持戒忍辱精進禅定般若(智恵)
   空の思想(竜樹・ナーガールジュナ) ←諸法無我
    あらゆるものは固定的な実体を持たない(無自性
     =一切皆空(五蘊皆空)
   唯識の思想(無著・アサンガ、世親・ヴァスバンドゥ
    すべての事物は実在せず、心の働きが事物を生み出している
     参考 色即是空、空即是色


第4章 人生の知恵
1,孔子と儒家の思想
(1)中国思想の源流
  紀元前8世紀ごろから王朝の封建体制が崩壊(春秋・戦国時代
  各国は富国強兵、国家の秩序安定のために広く思想家や政治家を求めた
   =諸子百家
  百家争鳴の中で儒家道家が後世に影響を残す

(2)孔子の思想
  現世主義
   孔子は現世における人間の生き方を追究
    →「未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん」

  
  …人として最も望ましい心の持ちよう
     他者を愛すること
  …仁の心が具体的に外へと表れたもの
     道徳的社会慣習
  仁と礼を兼ね備えたあり方が理想の人間像=君子
   「己に克ちて礼に復る(克己復礼)を仁となす」
   「人にして仁ならずんば礼をいかんせん」

  仁の中身
  考悌…仁の基本 考…親子間の愛、悌…兄弟間の愛
  克己…私利私欲を捨てること
   …人への思いやり
   …自分を欺かないこと
   …人を欺かないこと

  君子と徳治主義
  による政治ではなくによる政治を重視
  そのためには為政者が個人的道徳を身に着ける必要がある
   =修己治人

  ※墨家
   墨子を祖とする思想
   兼愛交利説(無差別な愛)や非戦論(非攻説)を説く


2,儒教の展開
(1)孟子
  孔子のを重視
  人間は生まれながらにして四端の心を持ち、
  その四端四徳を実現する =性善説

  四端の心
  惻隠の心 → 仁
  羞悪の心 → 義
  辞譲の心 → 礼
  是非の心 → 智
  仁、義、礼、智をあわせて四徳という
  のちにが加わり五常となる
   四徳を実現し、浩然の気を持っている理想的人間像が「大丈夫
   誰でも大丈夫になれる素質(良知良能)を持つ

  五倫の道
   父子の、君臣の、夫婦の、長幼の、朋友の

  王道政治 ⇔ 覇道政治
  仁義を重視した徳治政治
  人民の支持を失った君主は天命によりその地位を失う=易姓革命

(2)荀子
  孔子のを重視して社会秩序を保とうとした
  性悪説
  人はもともと悪いものなので礼儀や法を守らせないと秩序立てできない
  ※韓非子
   徳治主義とは異なる法治主義へと発展(法家