倫理 二学期中間範囲
(3)儒学の成立
  儒学
   春秋戦国時代から漢代に儒教の多くの経典が作成され漢代に儒学が成立
    四書…『大学』『中庸』『論語』『孟子
    五経…『易経』『詩経』『書経』『春秋』『礼記

  朱子学(宋代) ―朱熹(朱子)
   転地万物は理と気によって構成されている=理気二言論
    …宇宙と人間を貫く法則
    …事物を生成する物質的な材料

   人間の本性も理である(性即理)が、気に妨げられて本来の性を発揮できない
    →理と一体化した聖人となることが理想
   聖人となる方法論が格物致知であり、その内容が居敬窮理
    居敬…精神を統一して人欲を捨てること
    窮理…事物に備わる理を究めること

  陽明学(明代) ―王陽明
   理は心の中に備わっているもの(心即理
   よって人はもとから善悪を判断する力(良知)を持っている
    →この働きを十分に発揮すべき=致良知
     良知は行為によって実現される=知行合一

3,道家の思想 ―老荘思想
 人為(道徳や制度)ではなく、自然に従って生きることを主張

(1)老子の思想
  社会が乱れたから儒家などの思想が必要になった
  道徳や文化は人間が生み出した相対的なもの

  道(タオ)
   この世のすべての現象を生み出す万物の根源
   「有は無より生ず
   無→有→無と永遠に繰り返されすべてのものは変転する
    =絶対的なものはない

  「上善は水の若し」
   水のように生きるのが賢明な生き方と考える
    無為自然…あるがままに素直に自然に従って生きる
    柔弱謙下…常に人の下手に出て、争わない
   小国寡民
    以上のように生活できる農村共同体程度の規模の小国家
    理想社会
(2)荘子
  万物斉同
   ありのままの世界は本来は万物が平等で有しい世界である
   個々人の善悪、美醜などの区別は主観的であって相対的なもの
   宇宙全体から見ればその区別は全て大差なく同じ
    →功績や名声など自己への執着から人間の苦しみが生まれる

  心斎坐忘
   さまざまな区別を捨て道と一体になる境地のこと
    →自由となり天地自然と遊ぶこと(逍遥遊)ができる真人が理想像



第5章 人生における芸術

「美」というものを追究することで人生を導く指針となるのが芸術
 芸術に触れる 自ら芸術を表現する
  → 充実感を得るなど人間形成に影響を与える

ベートーヴェン(ドイツの作曲家)
 音楽の中に自己の完成を目指し、自由と人類の幸福を表現しようとした
 「運命」…不合理な運命に立ち向かう勇気を感じられる
 「歓喜の歌」…「すべての人は兄弟になる」

ロダン(フランスの彫刻家)
 人間のあらゆる感情や内面にこもる生命の躍動を表現
 「青銅時代
 「地獄の門」…有名な「考える人」

ピカソ(スペインの画家)
 20世紀の美術に大きな足跡を残し、
 「芸術家は政治的存在である」との立場を展開した
 「ゲルニカ」…スペインの内戦の惨劇を描いたもの










第6章 現代の特質と倫理的課題
1,科学技術の発達と今日の課題
(1)生命科学の進歩と課題
  20世紀の後半から科学技術の進歩により、
  バイオテクノロジー(生命工学)が発展
  また、医療技術も向上し、
  バイオエシックス(生命倫理)の問題が注目されるようになってきた

  3つの問題
   遺伝子組み換え、遺伝子治療など遺伝子情報の操作の問題
   クローン技術、人工授精、出生前診断など生殖の問題
   臓器移植、延命治療、尊厳死、安楽死などの問題

  倫理的課題
   生命の決定に人間が介入してもよいのか
    自然(神)に委ねられるべき領域に人間が介在することで
    自然が歪められる危険がある
    誕生や死は自然に委ねられるべき
   技術が正しく使われるのか
    優生思想や差別につながる恐れがある
    生命を手段とみなす恐れがある

(2)地球環境の破壊と私たちの課題
  科学技術の進展により豊かで便利な生活を送っているが
  一方で資源やエネルギーを大量消費し、地球環境を悪化させている

  地球環境問題
   地球環境の悪化
    地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊など
   生態系の危機
    野生生物種の減少、熱帯林の減少
    環境ホルモン(内分泌かく乱物質)による影響
   資源の枯渇

  倫理的課題
   現在の利益だけを考えればいいのか(世代間倫理)
    「持続可能な開発」(地球サミット)
    「最大期間にわたる最大多数の最大幸福
   人間のことだけ考えていいのか(生態系・地球への配慮)
    「かけがえのない地球


2,現代社会の特質
(1)現代の家族とその課題
  工業化、都市化や少子化に伴い家族のあり方が変化してきている
  核家族の増加、地域社会の縮小、高齢化の進展
   →家族や地域社会が担っていた役割が機能しない
     例 教育、育児、介護
  家族をめぐる問題
   問題の社会化 …学校や病院など家庭外の施設の利用
   女性への負担増…性別役割分担の意識は根強く残っている
  倫理的課題
   ふれあいという意識の低下
    世代間扶養、社会全体での支えあいという意識の再認識が必要
   責任意識の低下

(2)情報社会とその課題
  コンピュータや通信技術の発達に伴い大量の情報が行きかう
  高度情報社会が到来
  膨大な情報の中で適切に行動するメディアリテラシーが重要となっている

  倫理的課題
   匿名性の悪用
    情報の発信側
     有害情報や虚偽の送信
     プライバシー侵害
     情報の非対称性の悪用など
    情報の受信側
     知的財産権の侵害など
   非情報化への対応
    情報化されていない値域や情報処理能力を持たない人への配慮が必要

(3)ボーダレス社会と内なる国際化
  国際社会が拡大し、国境や越えた人やものや情報の移動が
  活発になり、国際社会が緊密化してきた
  グローバル化したボーダレス社会では
  国際社会の一員として様々な貢献が求められている

  期待される役割
   地域紛争の解決、発展途上国への支援、
   地域環境の保全、外国人労働力の受入など

  倫理的課題
   自民族中心主義(コスノセントリズム)に陥ることのないように
   心や慣習を国際的に開かれたものにする必要がある
    =内なる国際化
第7章 現代社会を生きる倫理
T 人間の尊厳
1,自己肯定の精神
(1)人間尊重の光と影
  近代に入ってから人間尊重の精神が生まれる
  人間尊重の精神は人間中心主義自己中心主義
  発展する可能性もあり、真の人間の尊厳について考える必要がある

(2)ルネサンスとヒューマニズム
  ルネサンス(文芸復興
   ギリシャ、ローマの古典文化の「再生」を目指す文化改革運動のこと
   14〜16世紀、北イタリアから西ヨーロッパに拡大
   文芸を境界的権威や封建制から解放
   人間尊重の精神に繋がっていく

  ヒューマニズム(人文主義
   人間らしい感情や意志を取り戻そうとする思想
    →神中心主義から人間中心主義へ
   美術の世界を中心に大きく開花

  万能人(普遍人)
   あらゆる分野で多彩な能力を発揮できる理想的な人間像
   レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ

(3)新しい人間観
  ピコ・デラ・ミランドラ
   『人間の尊厳について
    人間は天使にも悪魔にもなりうる中間的存在
    →それを決めるのは何者にも束縛されない自由意志
    自分がどうあるべきか自主的に決定できるところに人間の尊厳がある

  マキャベリ
   『君主論
    宗教や道徳から独立した君主増を提示
     目的のためには手段を選ぶな
     獅子のように力強く、狐のようにずる賢くあれ
    政治を理想からではなく、現実から捉えた






2,宗教観の転換
(1)カトリック教会の堕落
  贖宥状(免罪符)…信者の犯した罪を免除するために与えた証書
   贖宥状が協会の資金稼ぎのために乱売され始める
  エラスムス『痴愚神礼賛
   教会の形式化、僧侶の腐敗を指摘
   王侯貴族、司祭や教皇達の堕落を痛烈に風刺した

(2)ルター
  宗教改革
   1517年「95ヵ条の論題」を協会の扉に掲示
   教皇と教会のあり方を批判した
   「信者の全生涯が悔い改めである」
   「それは贖宥状なしに彼に与えられる」
    →ドイツで宗教改革運動が始まる
  ルターの思想『キリスト者の自由
   信仰義認説
    罪深い人間を救うことが出来るのは信仰のみである
   聖書中心主義
    カトリックの教会中心主義を批判
    信仰のよりどころは聖書のみであり、教会ではない
    →聖書をドイツ語に翻訳
   万人司祭主義
    聖職者と一般信徒の間の宗教的な身分の差を否定
    全ての人が司祭になることが出来るという平等思想
   職業召命観
    職業に貴賤の区別はなく、
    職業を通して万人に奉仕することが神への奉仕である

(3)カルヴァン
  予定説
   どの人間が救われるかは神によって予定されている
   聖職者や教会も救済には全く役割を持っていない
   →ただ神を信じて勤勉であるべき
  カルヴィニズム(カルヴァン主義)
   人間が職業労働に励むことは神の意志に応えること
   労働の成果は自分が神に選ばれていることの証明
   →近代資本主義の自由と労働力の存在を正当化
     ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
  プロテスタントとカトリック
   ルターやカルヴァンなどの立場をプロテスタントという
   一方、カトリック教会内部でも改革が起こりイエズス会が成立
   積極的な伝道活動を展開した
3,人間の偉大と限界
 16〜17世紀にモラリストと呼ばれる人々が登場
 彼らは人間の真実の生き方を模索した

(1)モンテーニュ『エセー(随想録)』
  「我何を知るか(ク・セ・ジュ)?」
   あらゆる真実が相対的であり、絶対的真実などは存在しない
   人類を救済する宗教でさえ、戦争でその凶暴性を発揮すると痛感
    ←その原因は自己反省の欠如から生まれる偏見や傲慢にある
     人間は偏見や独断を打ち破って自分の人間性を吟味(エセー)すべき

(2)パスカル『パンセ(瞑想録)』
  「人間は考える葦である
   人間は中間者として矛盾する二面性を持つ
    自然や神に対して弱い存在(悲惨さ)
    考えることでその悲惨さを認識している(偉大さ)=人間の尊厳
   弱い存在だからこそ神を信じるべきと説いた


U 自然や科学技術と人間とのかかわり
1,自然科学の誕生
 自然を神学的な解釈から解き放つべく自然科学が誕生
 観察や実験を重点に置き、自然の中にある合理的な法則を探求
  例 天動説から地動説(コペルニクス、ガリレイ)
    惑星の三法則(ケプラー)     万有引力の法則(ニュートン)

2,ベーコン『ノヴム・オルガヌム(新機関)』
 経験論
  知識は外界からもたらされ、経験によって得られた知識こそ確実なものと考えた
 「知は力なり
  経験によって得た知識は自然を支配でき、知は生きる力となる
 イドラ(先入観や偏見)の排除
  人間の観察や判断を歪めるイドラを排除することが必要
   種族のイドラ:人間という種族に共通する偏見
   洞窟のイドラ:個人的立場によって起こる偏見
   市場のイドラ:他人から聞く噂や言葉による偏見
   劇場のイドラ:伝統や学説など権威あるものから発する偏見
 帰納法
  経験から具体的事実を得て、それらに共通する法則や真理を求める
   =経験に基づかない独断論を否定
 ※イギリス経験論
  ベーコン、ロック、バークリ、ヒュームなど
  知識の源泉を理性ではなく感覚的経験に求める
3,デカルト『方法序説』
 合理論
  真理は理性によってのみ与えられると考えた
 良識(ボン・サンス)
  正しく判断して真偽を見分ける能力のこと  理性
  「良識はこの世でもっとも公平に配分されている」
 方法的懐疑
  確実な真理を得るために疑わしいものはすべて疑い、
  それでも疑い得ないものが公理、定理である
  「我思う、故に我あり(Cogito, ergo sum.)」
   =哲学の第一原理…ボン・サンスの存在を立証
 演繹法
  普遍的な真理を前提にして結論を導き出す方法
 ※大陸合理論
  デカルト、スピノザ、ライプニッツなど
  真の知識は理性的思考によって得られるとする立場
 物心二元論(心身二元論)
  考える「我」である精神と広がりを持つだけの物体とを区別
  外界の一切を物質的なものとみなし
  その変化を数学的、物理的方法で捉えた
   =機械論的自然観
 高邁の精神
  重要なのは良識を持って思考する精神に他ならない
  →理性に基づく自由な意志によって情念を抑制し、
   「高邁の精神」を養うべき