倫理 二学期期末範囲
V民主社会における人間のあり方
1,民主社会の原理
 啓蒙思想
  伝統的な偏見や無知から人々を理性によって解放し
  既存制度の不合理さを知らしめた

  社会契約説
   王権神授説に代わり、政府が存在する理由を社会契約によるものと説明
   政府(国家)は人々の権利(自然権)を守るために設立されたとする
    ホップズ、ロック、ルソー

  フランス啓蒙主義
   アンシャン・レジーム(旧体制)を批判し、
   フランス革命の思想的背景となる
    モンテスキュー法の精神
    ヴォルテール寛容論
    ディドロ百科全書

 自然法思想
  人間の理性または神に基づく普遍的な法が存在すると考え
  自然法に基づいて自然権の存在も主張される
  人は生まれながらにして自由であり平等である
   →基本的人権の思想へと発展、市民革命の思想的な柱となる

2,社会契約説
(1)ホップズ『リヴァイアサン
  自然状態
   「万人の万人に対する闘争」という戦争状態
   人々の生命は危機にさらされている
  社会契約
   生命の安全を確保するため自然権をすべて放棄
   権利の譲渡を受けたものが国家を形成する
    →統治者に無制限の権利を認め絶対王政を正当化することに

(2)ロック『市民政府二論
  自然状態
   平和な状態であり、人々は生命、自由、財産に関する自然権を持つ
   ときに他人の権利(特に財産権)を侵害するものが現れる
  社会契約
   権利の保障に必要なだけの自然権を政府に信託
   主権は国民に残っており政府が自然権を侵すようなことがあれば
   政府を変更することができる
    =抵抗権革命権 →名誉革命を正当化
(3)ルソー『人間不平等起源説』『社会契約論
  自然状態
   平和な状態で人々は自由、平等であり哀れみの情を持つ
   全員一致の意思である一般意思に基づいて政治をおこなう
  「自然に帰れ
   ルソーは文明社会の中で失われつつある人間性の回復を主張した
   (自然に戻るのではない)


W自己実現と幸福
1,カント『純粋理性批判』『実践理性批判
 批判哲学
  イギリス経験論と大陸合理論のどちらも批判しこれらを統合した
  これまでの考え方
   対象は人間から独立したもの
   客観を観察する中で五観が生み出され、
   人間が外界を正しく受け止めることによって真理が得られる
    ↓
  カントの考えかた
   自分の主観によって客観の認識がおこなわれている
    =認識上のコペルニクス的転回
    →人間が知りうるのは経験の範囲内での自然法則に限られる
     人間理性の能力(理論理性)では世界の全てを捉えることはできない

 自由とは
  欲望のままに行動する因果律(自然の因果関係)から逃れること
  自分の理性(実践理性)によって立てた普遍妥当的な道徳法則に
  自発的に従うことこそ真の自由である
   =自律
  行為の正しさを道徳法則に従って行動しようとする意思(善意思)に求めた
   =動機主義(動機説)

 道徳法則
  各人の格率(自分が立てる行為の規則)は
  全ての人が用いることができるものでなければならない
   →道徳法則は定言命法でなければならない
    定言命法…人間はこうすべきであるという「常に〜すべし」という命令
    仮言命法…条件付の命令

 人格
  自律の能力を持つ自由の主体のこと
  常に目的そのものとして絶対的価値を持つもの
   →単なる手段としてのみ使ってはならない
 目的の国(目的の王国)
  お互いの人格を目的として尊重しあう理想国家
   →この考えを国際社会に応用し、国際連盟の設立に影響を与える
    『永久平和のために

2,ヘーゲル
 精神と自由
  世界の根源は精神であるとし、その本質を自覚であると考えた
  自覚とは自己の内面を意識することであり
  自己を外に現すこと(自己外化)によって存される
   →自己実現させていくことが自由
  精神は個人だけでなく世界全体をも動かしている
  その究極の原理が絶対精神であり、その本質は理性であり自由である
   世界史は自由実現の過程であり、
   自由を求める精神が原動力となり発展した

 弁証法
  ある主張(正、テーゼ)と
  それに対立(矛盾)するもの(反、アンチテーゼ)を統合し
  さらに高次元の肯定(合、ジンテーゼ)へと発展していく流れのこと

 自由の実現=人倫
  自由は現実の社会のうちに実現されるべきであると考える
  法の客観性形式性と道徳の離別性、内面性を統合
   →人倫:共同体の秩序として実現された真の自由

 人倫の体系
  人倫は家族、市民社会を経て国家の段階へと発展
  家族の全体性と市民社会の個別性を統合
   →国家:人倫の最高形態
       法によって社会と矛盾を調整、人間の自由を最高の形で実現

3,功利主義
(1)ベンサム『道徳と立法の原理序説
  功利性の原理
   行為の善悪の判断基準をその行為か快楽や幸福をもたらすかどうか
   (功利性)考える

  「最大多数の最大幸福」
   個人の幸せの合計を増やせば社会全体の幸せも増える
   最も多くの人々に最も多くの幸福をもたらすものが最善の行為
    →7つの基準によって快楽は計算できる(快楽計算説
      =量的功利主義
(2)J.S.ミル『功利主義』『自由論
  質的功利主義
   快楽に質的な差を認め、幸福とは精神的快楽であると考える

  内的制裁
   真の快楽は良心の満足という内的制裁によって成り立つ
   良心により利己心を克服し、
   他人の幸福を願う献身の行為こそ幸福である

  ※民主主義への影響
   功利主義の思想は代議制による多数決原理や
   参政権拡大の理論的根拠となった

4,プラグマティズム
(1)プラグマティズムとは
  哲学を日常生活に関連させ行動を通して
  物事の有用性や有効性を規定する立場
  フロンティア精神がプラグマティズムを生み出したと考えられている

  パース
   プラグマティズムの創始者
   さまざまな観念は行動によってその真偽が確かめられると考える

  ジェームズ『プラグマティズム
   ある観念や知識が心理であるかどうかは
   実生活に対する有用性で判断すべきであると考える
    =実用主義
   真理とは主観的に得られる相対的なもの
    →行動により絶えず検証して見極める必要がある

  デューイ
   学問や知識は人間の行動に役立つ道具に過ぎないと考える
    →道具主義
   社会のさまざまな問題解決の道具として知性を重視
   知性…過去の価値観や習慣を変革し、新たな方向性を示す創造的知性

  ※分析哲学 ―ウィトゲンシュタイン
   言語は実在の写像であり、
   世界は言語が現実に使われることによって意味を持つ
   事物の本質や意味を問うことはできない
    →哲学は検証できない領域を扱っているため無意味である
     言語の濫用から世界観や価値観の無用な対立が生じてきた

X個人と社会とのかかわり
 資本主義が発展し、社会が巨大化、複雑化してきた
 人間が生産の歯車のひとつとなり、社会の中で人間性を失っていく
  =人間疎外

1,社会主義思想
(1)マルクス ―科学的社会主義
  労働疎外
   人間であることを自覚するための労働が命をつなぐための苦役となっている
   労働の成果である生産物は他人(資本家)の手に渡ってしまう
    →人間は類的存在であるが、
     その関係は個人の利益のためだけのものとなっている
     人間性を回復するためには原因である資本主義を
     革命により解体する必要がある

  唯物史観
   歴史は生産のための人間と人間との関係(生産関係)によって発展する
   つまり上部構造(政治、文化、社会など)は
   下部構造(経済、生産関係)によって規定される
    →生産関係はいずれ固定化し、
     矛盾が生じるため階級闘争によって社会制度を変革する

  プロレタリア革命
   現実の生産関係は資本化が労働者から搾取を行っており
   それが固定化されている
    →歴史必然的にプロレタリア革命労働者革命)が起き、
     生産手段が共産制になる

 ※空想的社会主義
  サン・シモン、フーリエ、オーウェンなど
  資本主義社会を批判し平等な社会の実現を主張
  実現のための具体的方法を示せなかったため、
  マックスやエンゲルスによって批判された

(2)マルクス主義の修正
  社会民主主義 ―ベルンシュタイン
   資本主義の必然的崩壊や暴力革命論を批判
   労働者が議会の多数を獲得することで徐々に社会の変革を目指す

  民主社会主義 ―ウップ夫妻
   社会主義団体であるフェビアン協会を設立
   議会を通して社会福祉を充実させることで
   渤進的な社会主義改革を目指す
2,実存主義
 実存主義とは
  個々の内面的な主体性を回復することで人間疎外を克服しようとした思想
  実存(今ここにいる人間の現実存在)を出発点として
  それぞれの生き方を追究する

 二つの立場
  有神論的実存主義 ―キルケゴール、ヤスパースら
   神との関わりの中で主体性を確立
  無神論的実存主義 ―ニーチェ、ハイデッガー、サルトルら
   神への信仰を否定して現実世界の中で主体性を確立

(1)キルケゴール 『死にいたる病』『あれかこれか
  主体的真理の追究
   「大地震」と呼ぶ意識改革を経て自分を例外者と認識
   自己が実存的に生きるための主体的心理こそ重要であると考えた

  不安と絶望
   人間にとって最大の恐怖は死であり、
   精神を死に至らしめる病が絶望である
   しかし、不安や絶望を克服する中で実存に達することが出来る

  実存の三段階
   美的実存倫理的実存宗教的実存

   美的実存
    享楽を求めて生きる
    むなしさや倦怠により絶望する
   倫理的実存
    道徳や価値観を持って生きる
    自分の不完全さ、無力さ、傲慢さなどに気づいて絶望する
   宗教的実存
    神を畏れながらも、ただひとり「神の前の孤独者」として神の前に立つ
    神への信仰によって絶望を乗り越え主体性を回復し、
    真の自己を実現していく

(2)ヤスパース 『理性と実存
  限界状況と包括者
   人間は自分の力では克服できない
   壁のような状況(限界状況)に囲まれており、
   そこに自己の有限性を感じ、不安や絶望を抱えて挫折する
    →その中で自分を越えた包括者の存在を感じ取る

  実存的交わり
   真の実存は単独からではなく、他者との交わりによってもたらされる
    →人と人とが交わりを持つような連帯性が必要
     その交わりとは他者と対立しながらも
     愛し合う「愛のたたかい」である

(3)ニーチェ 『権力への意志
  「神は死んだ
   19世紀に蔓延したニヒリズム(虚無主義)の原因は
   キリスト教道徳にあると指摘
   キリスト教道徳とは強者へのルサンチマン(怨念)が生み出した
   弱者の道徳(奴隷道徳)である
    →「神は死んだ」ことを認め、
     ニヒリズムを克服することで真の実存を実現できる

  権力への意志
   キリスト教道徳に代わる力強い価値を生み出すもの
   この意志によって自己を肯定して生きる超人となるべきである
    すべては意味もなく永遠に繰り返されるという永劫回帰を認識
    人生の苦しみも含めて肯定する運命愛を持って生きる

(4)ハイデッガー『存在と時間』
  現存在
   人間のみが存在とは何かを問うことが出来る
   そのような人間を現存在と呼んだ
  死人の存在
   人間とはいつ訪れるかわからない死に向かって生きている
   しかし死という不安から逃れるために時間を浪費し
   単なる「ひと」となっている
    →死を自覚し、有限な時間の中でその一瞬を大切にする
     「現存在」でなければならない

(5)サルトル『存在と無』
  投企的存在
   人間の道具とは異なり、
   自分自身を自由につくりあげていく存在である
    =「実存が本質に先立つ
   ただし人間は自由から逃れることはできず
   常に責任を負わなければならない
  アンガージュマン
   自由に自己を選択し、全人類に1つの人間像を
   提示して自己を社会参加させること
   自己の選択は社会全体に対して責任を負うことである
Y生命への畏敬と他者の尊重
1,生命への畏敬
(1)シュヴァイツァー
  「人間は生きようとする生命に囲まれた生きようとする存在」
  生命の維持、促進をもたらすものが善
  生命を阻害し奪うものが悪である
   →「生命の畏敬」こそが新しい世界観の根本原理

(2)ガンディー
  唯一絶対の真理を体得する(サティヤーグラハ・真理把持)ために、
  アヒンサー(非暴力・不殺生)とブラフマチャリャー(自己浄化)
  の徹底を説いた
   アヒンサー
    一切の暴力を否定し、積極的な博愛の精神によって行動する
   ブラフマチャリャー
    自己抑制によって体と精神を浄化し、純潔を保つ

(3)マザー・テレサ
  「最も貧しい人のために尽くせ」という神の声を聞き、
  キリスト教の愛アガペーを実践した
  ※ボランティア

2,無意識の研究
(1)フロイト
  神経症の研究を行う中で、無意識の領域に注目
  心の大部分は無意識の領域に隠れていると考える
  心はエス(イド)、自我超自我の三つの部分からなり、
  その深層部分は生の衝動(リビドー)が支配している
   →エスと超自我のコントロールが重要となる

(2)ユング
  人間はある共通のイメージを持つことがある
  彼はそれを元型と呼び、心のさらに深層には
  人類に共通する一つの無意識(集合的無意識)があると考えた









3,構造主義
 人々の考えや行動は個人の主観的意識を超えた
 構造が規定しているという考え

(1)レヴィストロース 『野生の思考
  野性の思考に見られるように、どの社会にも共通の
  普遍的な「構造」があり
、文化に優劣の価値序列を
  つけることは誤りである。
   =文化相対主義

(2)フーコー 『言葉と物
  理性的主体としての人間は作り出されたものである
   =抑圧の社会としての権力構造が存在する

(3)レヴィナス 『全体性と無限
  「私」とは根本的に同じではありえないという
  「他性」が他社の基本的な特性
  他性は単なる観念ではなく他者の「顔」に現れる
   →その他者に無限の責任を負うことで、
    倫理的な主体としての自己が始まる

4,フランクフルト学派
(1)ホルクハイマーとアドルノ 『啓蒙の弁証法
  理性が自然を支配するための道具となってしまっている
   =道具的理性
  「批判こそが哲学の本質である
  批判的理性を持ち続けなければならない
   =批判理論

(2)ハーバーマス
  理性とはコミュニケーションを行う働きである
   =対話的理性
  討議の中で互いに批判しながらも
  「合意」を形成していくことが必要である